神戸家庭裁判所 昭和29年(家イ)253号 審判 1954年11月30日
国籍
日本
住所
神戸市○○区○○丁目○○番地の○
申立人
木村花子(仮名)
国籍
アメリカ(カリフオルニア州)
住所
申立人に同じ
相手方
ウイリアム・ピカツト(仮名)
主文
申立人と相手方との婚姻(昭和二七年三月○日神戸市○○区長あて届出、受付番号○○号)はこれを取り消す。
理由
本件調停委員会において、当事者間に争のないことは事件当事者双方は主文記載の婚姻をしたが、相手方は前婚の妻申立外メリー・ルイス・ピカツトとの間の婚姻について本国の所轄裁判所において一九五二年(昭和二七年)四月一七日離婚を認めた中間判決がなされたので上記本件婚姻をしたところ相手方本国法では離婚を認めた中間判決があつた後控訴もなく、新訴の提起もなく、訴の却下もなくして、一年以上を経過した後所轄裁判所で離婚を認めた最終判決がなされないと再婚することができずこれに反する結婚は取消されることになつておるのに相手方と本件申立外人との離婚を認めた最終判決は一九五三年五月七日所轄裁判所でなされたため上記本件婚姻では前婚継続中になされた結婚になるところであり、また本件調停委員会において、当事者間に合意のできたことは当事者の主文記載本件婚姻は取消されるものであるということである。
真正に成立したと認める甲第一乃至第六号証によれば本件当事者間に争のない上記事実及び合意は正当であると認められるが日本の法律でも本件婚姻は取消されるものと認められるので家事審判法第二三条の規定によつて調停委員黒山貞二郎同古川虎夫の意見を聴いた上主文のとおり審判する。
(家事審判官 高橋猪久馬)
申立の趣旨
申立人と相手方との婚姻を取消すとの御審判を求める。
事件の実情
一、申立人は昭和二七年三月○日神戸市○○区役所に於て国籍米国合衆国ウイリアム・ピカツト(本件相手方)との婚姻届出をしたが、右届出の当時左記の通り婚姻取消の原因があつた。即ち、本件婚姻届出当時前記ウイリアム・ピカツトは米国カルフオルニア州最高裁判所に於てその妻(米人)との離婚訴訟中であつた。そして、ウイリアム・ピカツトはその頃カリフオルニアに居たが、自分の弁護士から離婚の判決を得ることは確実であるので次の婚姻の相手方が外国人ならば、最早その準備して差支ないのであろうと云われたので、宣誓書等必要書類を作成して、之により先メリー・ルイス・ピカツトが、在日中に婚姻の約束をしてあつた本件申立人に送付して来た。
二、申立人は右のウイリアム・ピカツトの送付し越した書類を添付して冒頭記載の婚姻届出をしたものである。
三、然るに、其後相手方ウイリアム・ピカツトは米国から来日本件の婚姻届を在神戸米国領事館にせんとして本件の婚姻届(○○区役所にしたるもの)は無効であることを知つた。
四、依つて申立人は曩に昭和二七年三月○日届出の婚姻を一旦取消改めて之と同一の当事者の婚姻届出をしたい希望を有している即相手方の前婚解消の日以後に届出をすることを必要とする為め本申立に及んだ次第である。
五、尚申立人と相手方は昭和二九年四月以来同棲し、申立人及相手方双方共正式婚姻の希望を有し相手方は附属書類第二号の通り米陸軍当局より申立人との婚姻許可を取付けている(昭和二九年七月二二日附)
六、尚調停の際は大田一雄委員の調停を申立人並びに相手方は希望します。